教育
フィジー・ツバルの教育環境について
◆フィジー全体が抱えている問題
現在フィジーの人口の約半数がインド系であるため、フィジー語ではなく、英語で授業が行われている。フィジー語の使用頻度が減ることによって起こる、フィジー文化の衰退も大きな問題となっている。
フィジーには、独自の生活を営む村が数百あり、政府もその正確な数を把握できていない。そのような村の多くは、今でも伝統的な自給自足の生活を営んでおり、貨幣文化はそれほど普及しておらず、学校に行かずに畑仕事をしている子供たちも多い。あまりに多くの村が存在するため、各村に学校を作ることは不可能であり、国がすべての村に平等に教育の場を提供するのは財政の面からしても困難である。
そのようなフィジー人の村の現状に対して、フィジー国内で比較的裕福なインド系住民は都市部に集まり、高度な教育を受けている。フィジー国内で村と都市部、フィジー人とインド人の間で教育格差が問題となっている。
◆フィジーの村の公立小学校
フィジーの村を訪問、公立小学校を訪れる。小学校は村ごとにあるわけではない。いくつかの村の住民が共同出資し、学校を建設している。日本では、義務教育段階では授業料、教科書などは国から支給されるため必要ないが、フィジーの公立学校にはそのような国の支援はいっさいない。そのため、経済的な理由でやむをえず学校に通うことのできない子どもたちも多い。昔ながらの自給自足の生活を営み、栽培しているココナッツや農作物、魚などを売ってわずかな貨幣収入を得ている家庭にとって、子どもの教育費は大きな負担である。
私たちが訪問した小学校では、たった4人の教師で学校を運営していた。一つの教室で二学年同時に一人の教師が指導を行っている。教師不足も深刻な問題といえるだろう。
この村の小学校でも、授業はフィジー語ではなく英語で行なわれていた。日本の「国語」にあたる、フィジー語の授業も英語で行われる。
◆フィジーの大学・USP
南太平洋の国々からたくさんの学生が集まるUSPは、南太平洋の教育の中心を担っている大学である。USPでは地球温暖化をはじめとした、環境問題解決に向けてさまざまな研究やプロジェクトが行なわれている。
南太平洋の国々から集まる学生の中には、母国語ではない英語の講義についていけない学生もいる。そのような学生のために無料で、英語のレッスンや、レポートの書き方の指導を行なっている場所があり、万全のサポート体制で、南太平洋の各国から学生を受け入れている。
また、10の国に分校があり、そこからパソコンを利用してUSP本校から配信されるネット講義に参加することができる。ネット環境が整っていない国には、講義を収録したDVDやテキストなどを配送している。
基礎教育が普及していない一方、大学の教育環境は日本以上に充実しているという印象を受けた。
◆ツバルの小学校
8歳まではツバル語で授業が行なわれるが、9歳からは英語で授業が行なわれる。教科書は、フィジー製の英語で書かれたものを使用している。
日中は30度を越えるこということもあり、午前8時始業、午後1時終業と短時間集中で授業が行なわれている。この短時間で、基礎教育に加え環境教育を行なうのは困難であるので、現在時間を延ばすことも検討されている。
◆ツバルの大学
ツバルにはUSPの分校もあるが、奨学金を利用してUSP本校(フィジー)やオーストラリア・ニュージーランド・日本などの国々に留学する学生も少なくない。奨学金は、日本の奨学金のように返済の義務はなく、大学卒業後2年間ツバルで働くという条件のみで奨学金を得ることができる。奨学金のシステムは、フィジーやオーストラリア・ニュージーランド・日本といった国々の援助金をもとに運用されている。
ツバル政府は、教育に重点を置いていて、国家予算に占める教育費の割合は医療費についで高く、小学校までは授業料も必要ない。
◆ツバルの性教育について
家族の中で性に関する話題はタブーとされているツバルでは、学校でも性の問題は取り上げられない。
出稼ぎに出ている海員が、航海の途中でHIVに感染し、その海員を媒介として、国内のHIV感染者数が年々増加していることが問題となっている。これをうけて、日本や海外の援助団体が若者の性教育に取り組んでいる。避妊具の使い方を記したパンフレットとともに避妊具を配布したり、若者の集まる施設にポスターなどを貼ったりして、避妊具の使用を訴えっている。
◆ツバルの環境教育の現状
環境教育に関しては、総合学習に時間を利用して年に一度取り上げる程度である。それ以外は、理科や社会の時間に盛り込んで教育されている。しかし、自国のおかれている状況を認識している国民は少なく、環境意識がとても低いという印象を受ける。
また、敬虔なクリスチャンであるツバルの人々は、「ノアの箱舟」の物語の中で、神がノアに言った「二度と洪水を起こさない」という言葉を信じて疑わない。それも国民の環境意識が低いひとつの原因である。
教育省は国民の環境意識の低さをうけて、環境教育の充実の必要性を感じている。現在、新カリキュラムを作成しており、「環境」という教科を新たに盛り込むこと、社会科の一部に環境科として組み込むことが考えられている。
また、教育省から各学校へ環境問題の専門家を送り、教師のスキルアップを図っている。 現在ツバル国内で、地球温暖化による海面上昇よりも深刻な問題となっているのは、ごみ問題である。ごみの焼却施設のないツバルでは、島のいたるところにゴミ置き場があり、可燃ごみ・不燃ごみ・粗大ごみ・資源ごみなどが分別されることなく、そのまま放置されている。景観の問題だけではなく、悪臭、伝染病の発生、水質汚染海洋生物絵の影響などさまざまな問題の発生が懸念されるこのゴミ処理問題に、住民たちはあまりにも関心が低い。これは、国民の大多数が、ゴミの不適切な処理が人体や自然環境にどのような影響を及ぼすのか教育を受けていないために、分別して処理するという概念自体が存在せず、ゴミはすべて分解されて土に返ると考えている人が大半であるためである。 このような現象が起きているのは、ツバル一国に限ったことではない。多くの発展途上国が同じような問題を抱えているに違いない。「知らない」ということが引き起こす問題はあまりにも大きい。逆にいえば、「知っている」ことで未然に防ぐことのできる問題も多いということだ。「環境問題」と「教育」。この二つは、決して切り離すことのできない問題であると実感した。
著:秀島
教育制度
Fiji
8-4-3-制
義務教育は8年間(1997年開始)、ただし学費はSecondary Schoolまで無料
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Primary School |
Secondary School |
Tertiary |
対象年齢 |
6〜13 |
14〜17 |
19〜21 |
学校数 |
715 |
164 |
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進学率 |
5割 |
6割 |
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・Secondary School終了後、・大学進学希望者は1年間フォーム7で勉強
・管轄 : 教育省
・学期 : 一月始業の三学期制
・就学前教育: 3〜5歳対象 全国に535校
・給食 : なし
・学級 : 1学級に40人まで
・識字率 : 86%
Tuvalu
義務教育は10年間(Secondary school2年間まであり、進学には試験がある)
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Primary School |
Secondary school |
対象年齢 |
6〜13 |
14〜17 |
学校数 |
10 |
1(バイツプ島) |
・管轄は教育省
・教科書は政府から配布(フィジーから輸入)
・Secondary school以降の進学はUSPもしくは他国へ
・政府からの奨学金を受けた場合、2年間政府で働く
・就学前教育(Pre-school)を受ける子もいる
著:shibata